1994年8月29日、イギリスのマンチェスターから現れた5人組バンド、Oasisがデビューアルバム『Definitely Maybe』をリリースしました。それから30年以上が経った今も、このアルバムはブリットポップというムーブメントの原点として、そして「ロックンロールとは何か」を体現する一枚として語り継がれています。今回は、この伝説的な作品について振り返ってみたいと思います。

「史上最速で売れたデビューアルバム」

『Definitely Maybe』は、当時イギリスで最も売れたデビューアルバムという記録を打ち立てました。1994年8月に発売され、発売直後から批評的にも商業的にも大成功を収めました。当時としては史上最速で売れたデビューアルバムとなり、イギリス国内だけで200万枚以上を売り上げる7倍プラチナ認定を獲得、世界では500万枚を売り上げています。まさに「無名の若者たちが一夜にしてスターになった」瞬間を刻んだ作品と言えるでしょう。

収録曲の魅力

アルバムには、今なお色褪せない名曲がずらりと並びます。代表曲には「Supersonic」「Live Forever」「Cigarettes & Alcohol」などが含まれており、発売から数十年が経った今でも1994年当時と変わらぬ新鮮さと説得力を保っています。Supersonicあたりは特に聞きやすいですね。

ノエル・ギャラガーの荒削りながらも力強いソングライティングと、リアム・ギャラガーの独特などら声のようなボーカルが融合し、それまでのイギリスのギターロックにはなかった大胆さと自信に満ちたサウンドを作り上げました。あるレビューでは、このアルバムはビートルズからストーン・ローゼズに至るまでのイギリスのロックンロールの最良の部分を、わずか11曲の中に凝縮していると評されています。

出身地としてのマンチェスター
Oasisは1991年、マンチェスター北部のバーンエイジ(Burnage)というエリアで結成されました。中心メンバーのノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーの兄弟も、このバーンエイジ出身です。

「マッドチェスター」の流れを継ぐ存在
1980年代末から90年代初頭にかけて、マンチェスターはストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズといったバンドを生み出し、「マッドチェスター」と呼ばれる音楽シーンで盛り上がっていました。Oasisはこの流れの後を受け継ぎつつ、よりストレートなギターロック、ロックンロールへと回帰し、90年代半ばの「ブリットポップ」ムーブメントの中心的存在となりました。


マンチェスターとの深い結びつき

  • ホームタウンでの凱旋公演として知られるマンチェスター・シティのホームスタジアム、エティハド・スタジアムでのライブは、彼らのキャリアの中でも象徴的な瞬間とされています。
  • ノエル・ギャラガーは熱心なマンチェスター・シティのサポーターとしても知られています。
  • 2025年の伝説的な再結成ツアーでも、地元マンチェスターでの公演は特に大きな熱狂を呼びました。

つまりOasisは、単に「マンチェスター出身のバンド」というだけでなく、その音楽性やスタンスそのものがマンチェスターという街の気質を体現した存在だと言えます。

音楽的な位置づけ

『Definitely Maybe』の評価は年月を経てさらに高まっています。2008年にはQマガジンとHMVによる「グレイテスト・ブリティッシュ・アルバム」投票で1位に選ばれるなど、数々の「歴代最高のアルバム」ランキングに常連として名を連ねています。また、ストリーミング時代においてもその人気は衰えておらず、1990年代にストリーミングされたアルバムの中で2位を記録しています(1位は同じくOasisの『(What’s the Story) Morning Glory?』)。

30周年を経てなお色褪せない存在感

2024年8月30日には、発売30周年を記念した「デラックス・エディション」がリリースされました。このデラックス盤には、2CDまたは4LPの形式で、1993年の初期セッションから発掘された未発表の16曲が新たに追加収録されています。さらに、当初録音されながらお蔵入りとなっていたモンナウ・ヴァレー・スタジオでのセッション音源や、コーンウォールのソーミルズ・スタジオでのアウトテイクが、ノエル・ギャラガー自身とキャラム・マリニョーの手によって初めてミックスし直されて収録されました。

この再発盤のリリースは、2025年に実現したOasisの奇跡的な再結成とも重なるタイミングとなり、多くのファンにとって特別な「30周年」となりました。

『Definitely Maybe』は単なる「デビューアルバム」という枠を超え、90年代のイギリスの若者たちの気分そのものを写し取った一枚です。「俺たちはこんなもんじゃない、もっと上に行く」という若きOasisの野心と自信が、11曲すべてにみなぎっています。まだ聴いたことがない方は、ぜひ「Rock ‘n’ Roll Star」の1曲目から通しで聴いてみてください。90年代のマンチェスターの熱気を、きっと肌で感じられるはずです。